......の無い

沢村健太郎
某有名国立大学の文学部助教

お客に名刺を要求することは多い

「名前知りたかったの」
「こんど、電話かメールしてもいい?」

割と早い段階でそんなことを言う
すると、本当に一回きりと考えているお客は
名刺は出さないが
ミキを気に入ったり
独り者で寂しい奴だったり
本気で連絡が欲しかったり
そんなお客はたくさんいる

暇なときには風俗とはいえ
メールや電話できてほしいと伝える
でも、なんとなく彼には言えなかった
彼を単なるお客だと考えようとしていたが
本当はそれは嫌だった自分もいたのだ

「沢村さん?」

「やっと、聞いてくれたよね
君の本名は?」