ひとつ先

息子は田舎から頑張って勉強して

東京の私大に入り

努力に努力を重ねて

なんとか大企業に就職した

そして、恋愛をして嫁と結婚した

息子は極々、貧しい農家の子供だ

ただ、努力と頭が少し良かっただけだった

東京の四年生の大学に行くために

先祖代々、持っていた小さな山を売り

お父さんと私は、せっせと農協に

柚子や大根、ナスなんかの

世話をしてもらって市場で

売れるようにしたのだ


息子が大学を卒業して大企業に就職するまで

肉も魚も食べなかった

市場に出せないクズ野菜とご飯だけの生活が4年続いた



もちろん、息子もインスタントラーメンの生活だったようで、家に久しぶりに帰るとクズ野菜の味噌汁すら、うまいうまいと食べたものだ