逃亡

その場所はもう、随分前に店を閉めたであろう

汚いスナックのような場所だった

店に飾ってあった生の花が、黒いすすのようにしぼんで

店の片隅を飾っている

黄色い進入禁止のテープは張られていたが

立ち番の警察はいなかった

汚くて汚れている、古い椅子やテーブルは倒れて

散らばっていた

争った跡はしっかり残っている

私は事件をネットで追っている時に

刃物の跡、血が流れ出ていた

そう書いてあったSNSを見たのだ

現場に詳しすぎる、警察のはずがない

そして、拓は殴った拍子に倒れて動かなくなったと言った

どっちが本当なのか見に来たのだ

黒い血の跡が、かなり広い範囲で認められる

 

昔田舎の村で、高梨の爺さんが包丁で刺された時の

血だまりと似ていた

あの時は孫が犯人だった

孫は高梨の爺さんそっくりで、二人の仲が悪かったのは

有名だったあそこの婆さんや嫁は喧嘩するのは仲のいい証拠

なんて馬鹿なことを言っていたが、爺さんの年金を使い込む

孫、その孫の寝首を掻こうと鎌をいつも持っている爺さんなんか

仲がいいわけがない