暇な奴ら
逃走
「4時間も待ったんだよ!
パパからラインのID、聞いてたんだろう?
何の用事があったのか知らないけれど
一言、遅れます!ぐらいはできただろう?」
「ごめ~ん、そう言えば、忘れてた!
彼氏がさ~話してくれないから~
それに、おばあちゃん、ラインとかできるの?
どうせできないでしょう?」
バカな孫と付き合うのはごめんだ
「預かってるカギを出しな!
それから、スマホも!」
ちゃっちゃっとライン交換して鍵をもらうと
そこで、別れようとした
すると、チェリーは悪びれもせずに
「おばあちゃん、今日はおばあちゃんのところに
泊まったことにしといて!お願いね~」
そう言って走り去っていく
本当にバカ娘だ!
逃走
久しぶり、小学生のころ
一度田舎に遊びに来たきり会っていなかった
あの頃から、バカだと思っていたが
やはりバカだ
「お父さんから、私のラインのアドレス聞いてたでしょう
何で、時間に遅れた時に連絡しないの?」
すると、今気が付いたとばかりに
「あ、そうだった!
ごめんごめん、彼氏が離してくれないからさ~」
遅れたことを謝るのに
自分の祖母に彼氏の話をするなんて
最近の若い者は、『恥ずかしい』
ということを知らないのかね~
「もう、ひとりで行けるからいいよ
鍵をおくれ!あんたはさっさと帰りな!」
逃走
逃げるように東京に出てきたけれど
全く西も東も分からない
だからと言って息子の家にお世話になるのは絶対に嫌だ
とりあえず、東京の隅でアパートを探したい
そう、息子に連絡を取ったら、探しておくから
そう言って住所を書いたラインが送られてきた
息子もうちに来いとは一言も言わなかった
期待はしていなかったが寂しいものだ
その住所のアパートに行くのにわかりにくいだろうと
チェリーに案内させると言ってきたのだ
東京駅で4時間待ったころ、やっとやって来て
あたりはすっかり夜
東京駅からはその住所まで結構あることから
ホテルに泊まろうと言ってるのだ
「だって、お年寄りって早く寝なきゃなんでしょう?
あっちにつくの10時ころになっちゃうよ」
「ばかばかしい!
誰がそんなこと言ったんだい?
私はいつも寝るのは夜中の一時だよ」
その住所までぐらいならサッサと行けると思っていたのに
わざわざ、息子が孫に案内させると言うから遠慮してたのだ
おかげで、おなかの中はコーヒーでタプタプしている
暇な奴ら
逃走
智恵理・・・チェリーだそうで、バカバカしい名前だ
上の男の子は息子そっくりで、息子と同じ大学に通っている
息子は無口で大人しいところが取り柄だったが
そこはそっくりだ
生まれてから、一度もまともに会話したことはない
息子と同じようにまじめに勉強して、立派なところに
就職するのだろう
立派なところってやつが、曲者だがしかたがない
私は高校を出てすぐに農協に勤めている夫と結婚した
この人がまた、真面目なだけが取り柄の人
・・・・だと思ったのだが、この間、近所の若い嫁さんと
駆け落ちしたのだ
周りの目が命の田舎暮らし、私は財産をまとめて
東京に出てきたのだ