発達障害の母

その上に、周りの余っている土地に

次男が結婚すると言うので新築の家まで建てたのだ

 

それには少し事情もある

祖父の父には後妻が来ていて

その後妻の長女が年頃で、祖父とはちょうどよく

後妻の気持ちとしては娘が次男の嫁になって

この家にうまく取り入りたいと言うことだったようだ

本当に美人でやり手の人だったようで

祖父の家は代々、顔がいいので有名だった

その後妻の連れ子三人もどの子も綺麗な顔で

特に一番下の男の子は

村どころか県下一ではないかと

思われるほど美しい子供だった

その美しさでも元の奥さんの子供と競っていて

長男の家族は次男の嫁に継母の子供ってことに

反発していたらしい

そこで祖母だ!

小さな願い

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ミキはその事件の詳細を知って驚いた
普通になろうと一生懸命頑張っていたのは
理子のほうだった

理子の家は四人家族
はた目には姉が大学を出た後、ルポライターをやっていて
仲のいい家族としか見えなかったらしいが
姉とは理子は父親違いで
姉は何かと問題を起こしていたらしい
子供のころからひねくれもので
小学校の頃は万引きしたものを理子のカバンに入れたり
歩道橋の上で後ろから押したり
とても子供がするレベルの意地悪ではなかった
父親は激怒して
『お金は出してやるが、一緒に暮らすのは勘弁してくれ
このままでは理子の命が危ない』

そう言って姉を遠い親戚に預けていた
近所には病気がちだと言っておいたので
みぃの調査にはひっかかってこなかったのだろう
その後、四年生の大学に行って
会社勤めをしているとしか調査書には載っていなかった

発達障害の母

祖父の家はその頃で言う分限者ってところで

その辺りの村では、羽振りがいいので有名だった

村ではたいがい、一階の藁ぶき屋根に部屋が四つの

そう、狭くもないが村では一般的な家屋に

祖父母と親二人、子供は4人くらい、そして

祖父母の子供が多かった家では

親の兄弟も一緒に住んでいるのが一般的だった

そんな中で祖父のところは

まず、山の中腹の一番上のほうに

祖父の父親と妻、妻と言っても祖父の継母になる人で

連れ子が三人いて、その頃では珍しい瓦屋根

それも真っ赤に塗った屋根で派手に暮らし、隠居と呼ばれている

祖父の兄は長男で、その隠居から少し下に

広い一軒家、蔵もそばにあり、離れもついている家で

そこで兄夫婦は子供三人と暮らしている

 

小さな願い

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それは、都内の住宅地で
姉妹が姉妹げんかの末、妹が姉を刺したと言うものだった
みぃは

「その事件があった、その家!
理子ちゃんの家なの!
今、警視庁の知り合いに問い合わせて
ちゃんと聞いてもらってるんだけど
多分、間違いないわ!」

「え?理子ちゃんがあのゆすりでやって来た
お姉さんを刺したっってこと?」

「たぶんね」

「ショウ君には?」

「知らせてない!
振られたあと、イタリアの仕事に専念したいから
数か月は帰らないって言ってた
知らせないよ、絶対!
こんな小さな事件、多分、向こうでは流されないだろうし
殺人未遂って言ってたから、お姉さん、死んでなさそうだし」

みぃはショウがそんな事件を知って
理子ちゃんにもう一度接触するのを嫌ったのだ
ミキも同じ気持ちだった

発達障害の母

戦争が終わってすぐの時代だ

女が男に面と向かって好きだなんて言う時代ではない

それを祖母は平気でやってのけ

祖父はころりと参ってしまった

 

母は中学の時に父親に

 

「なぜ、お母さんと結婚したの?

別れればいいのに!」

 

そう直接言ったそうだが、祖父にしたって

どうして祖母と結婚したのか全くわかってはいなかっただろう

わかっているのは結婚してみて

ものすごいお荷物をしょい込んだってことだけで

それまでは親族の中では

優しくて正確がよくて、親族一頭のいい青年だったのが

頭の悪い女の策略に乗せられた、人のいい男になってしまった

小さな願い

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しばらく正二の話で盛り上がった後
これがゆすりに使えない以上
その理子ちゃんの姉、高坂保奈美はどうしたんだろう

「彼女は当てが外れたように帰って行ったわ
そこは痛快だったんだけど
それから数日後に理子ちゃんからショウが
別れを切り出されて、それっきり連絡がつかないんだって」

「そう。お姉さんがしたことが恥ずかしかったのかしら?」

「まぁ、そうでしょうね~
でも、お姉さんと自分の恋愛は関係ないでしょうし
うちだって、そんなこと気にもしないわ」

その時はそんな話で終わって
二人とも深くは何も考えていなかった

それから一週間後、みぃからの突然の電話

「ちょっと、今、ニュースやってるからテレビつけて!」

発達障害の母

恋愛の細やかな恥ずかしさが全くないのだから

免疫のない祖父は面食らったが

直接、目の前にやって来て大好きだ!一緒にいたい!

何処にいても、祖母は祖父を見つけると飛んできて側にいる

そして、祖母は綿密に自分の容姿を整えた

まず、ご飯を食べない

その頃流行った洋画に出てくるような細いウェスト

少し濃いめのメイク、

いつだって明るく楽しそうにやってくる

祖父が逃げ場のない恋に落ちたのは仕方のないことだろう

そして、祖母の村と祖父の村は汽車で一時間ほど離れていた

祖父の噂は知っていたが、祖母のことなど

その時まで祖父は全く知らなかったのだ