もちろん、それは周りの人間の問題ではない
自分の問題なのはよくわかっている
でも、未練が一つもない
自分のに少し驚いた

みぃには生まれて初めて会ったのだ

その、豪勢なマンションにまず、驚いた
沢村は大学教授だが
文京区の古い家だし
お金に不自由しないが
贅沢には程遠かった

港区の恐ろしくセレブなマンション
出て来たみぃと言う叔母
女優かと思うような美しい人だった

母よりはかなり下なのは聞いていたが
若い美しい人だった

発達障害の母

「いじめ殺したって?」


私が驚いて尋ねると


「まぁ、たぶん本当のことだと思いますがね

あそこの爺さんが倒れて半身不随になった時に病院に入れるのはお金がかかるからって、息子と母親が二人で面倒見るからって家にいたんですが

その姑さんも意地悪な人で、看病を雅ちゃんにさせれば、必ずいじめ殺すだろうってふんでたようで、看病は子供ができない嫁がするのが当たり前だってさせたんだけど、案の定、雅ちゃんもあの性格だから、まともには見ないし親戚の話ではその爺さんあざだらけだったって話ですよ

それもベッドの端に紐をくくりつけて自殺してたからね〜その時間雅ちゃんはずっと、家に一緒にいたはずなんだから止めることはできたんじゃないかって.....

お姑さんにしてみれば邪魔な夫をバカな嫁がいじめて自殺に追い込んでくれたって

なんか、凄まじい話ですよ」


速水はこの家で
その叔母の話が出ることが
なんとなくタブーになっていた
この長い年月を思った

特に康太叔父が嫌そうだった
だから速水からその名前を出すことも
その叔母に会いたいと言うことも
言ってはいけないことのような気がしていた

でも、いよいよ会えるのだ

学校の手続きが終わって
誰にも会わないまま
学校は辞めた
あの、電話をかけて来た親も
そうなったら何も言わないだろう
学校にはなんの未練もなかった

女子たちには
どうせ、変な噂が流れていて
嫌われていたし
男の子たちにとっては
すぐにやらせる軽い女だった
自分から友人になりたいなんて
思う子は誰もいなかった

発達障害の母

雅ちゃんが帰って行くと


「助かりましたよ〜

あの人、最近は愚痴を言っては

酔いつぶれて、合間に僕に

相槌をもとめるから

知らなくていい話まで知って来ますからね

田舎に、こう言う店を出すときに

そういう田舎の揉め事には

絶対にタッチしたくないって思っていたのに

彼女が毎晩のようにここで酔い潰れるから

すっかり、あそこのマスターと

怪しいなんて言われていますよ」


私が笑いながら


「大変だと思うわ

あの人も苦労したのね」


そんなことをしんみり話すと


「はははは!

大丈夫ですよ

あんなこと言ってましたが

あそこのお舅さんは

彼女がいじめ殺したって評判ですよ」

発達障害の母

帰って来ると

延々と苦労話が始まった


「とにかくいじめられてなぁ

子供ができないってだけで

こんなにいじめられなきゃならないなんて

苦労したんだよ〜

今まで我慢したのに

50幾つになって真剣に

離婚してくれなんて言われるとは

思ってもいなかったわ

そういえば、あ〜ちゃん

星田医院の先生、光男となかよかったよね

あの人死んじゃってさ

医者の不養生ってよく言ったものだよね

でもさぁ、あの、奥さんがくせもんでね

絶対、うちの旦那と一緒になりたかったから

毒でも盛ったんだと思うよ」


あまりの話に絶句していると

雅ちゃんの妹が呼びにきた


「お姉ちゃん。離婚でお金もらうまでは

あそこの家にいなきゃ

もう、いい加減に帰りなよ」


そう言って連れて帰った

「そういう体質ならば
そういう体質で仕事もできるし
それを利用してなにかできることなんて
たくさんあるさ」

沢村はさすがに娘に
男の体が欲しくて仕方のない体質だとは
言いづらい

「ずっと、家にいるの?」

確かにずっと家にいれば
問題は起きないだろうが
そういう体質ならば
宅急便を持ってきた男にすら
近寄って行くだろうことは
ミキは母を思い出してよくわかっている

「みぃのところにに相談に行ってくるわ
速水を連れて」

沢村は頷いた

発達障害の母

「星田医院だよ」


小学校の頃、私がどんなに頑張っても

彼には勉強では勝てなかった

星田光男だ

田舎には珍しく茶色の髪で

色が白く、背も高かった

中学までは一緒で、

中学では女の子には人気で

バレンタインの時にはチョコレートを

山ほどもらっていた


本人はそういう男女のことはまったく

興味がなく

勉強ではまともに問題を解きあうことができるのが私だけだから

2人で、よく数学の難問を解きあって

私は女子たちに羨ましがられたものだった


性格も良かったし、さっぱりした子だったが

もう、死んだのだ


ちょうど、雅ちゃんがトイレから

帰ってきた


「なんか、泣いてばっかりいたんだけど

久しぶりに同級生に話すと

すっきりするわ〜」