魔女

瑞樹ちゃんは少し汚れたTシャツと

黒いカボチャパンツをいつも着ているのだが

私たちと知り合ってから二週間近く

ずっとその格好で、髪の毛も洗ってもらっていない?

下着すら替えてもらっていなかったようだ

子どもだから、匂いもそうきつくはなかったが

くうちゃんが私に瑞樹ちゃんがいないときに

 

「瑞樹ちゃん、ずっと、おんなじ服で汚いよね~」

 

くうちゃんはおばあちゃんにたくさんかわいい服を買ってもらっていた

安くても衛生的で、私も預かっている間

いつも、くうちゃんをこざっぱりさせておかなければと

気を使ったものだった

だんだん、首をかしげることが多くなった頃

瑞樹ちゃんは突然来なくなり

私はそれをありがたいと思い

アパートのいるとまた、来るかもしれないので

くうちゃんを子供の遊び場に連れて行ったり

電車で出かける用事をわざわざ作った

魔女

正野さんのような人と喋るのはストレスで

世の中に、文学や政治、歴史、

そんなことに全く興味を持たない人がいることを初めて知った

私の家では父が歴史が大好きで、だいたい、家族で話していると

気がつけば、そんな話ばかりしている

友人はだいたい本好きが多い

もちろん、難しい本ばかりではなく漫画も好きだ

大学ではだいたい、政治関係の話をする友人が多い

母が芸能関係の話、ドラマなんかの俳優さんの話

なんかが好きだったから、その話題も話す

だいたい、回りの叔母さんはそうだ

正野さんばかりはわけのわからない話ばかりで

水子の話はあとで調べて、笑ってしまった

私は処女だ

とにかく、何か口実を設けて

くうちゃんと瑞樹ちゃんを一緒に遊ばせたくない

そう真剣に悩み始めたころだ

魔女

それは二週間くらいのことだった

引っ越してきて、くうちゃんと遊ばせたのは二週間くらいだった

遊びに来るように言われると

私はくうちゃんだけを遊びにやることはしなかった

それは、私のバイトの時間でもあったからだが

そうなると、正野さんは私がずっといることが

大変助かったようで、私とくうちゃんが行くと同時に

夫と出かけて行った

私に留守番をさせ、瑞樹ちゃんのめんどうも見らせる

なんて嫌な人たちだとは思ったが

くうちゃんは瑞樹ちゃんと遊びたがるので仕方がない

たまに、正野さんの夫が私をいやらしい目で見たりするので

本当に嫌だったのだが

その頃の私は、これも夏休みの間だけだとあきらめていた

くうちゃんがいなくなれば、おしまいになることだ

だいた、この夫婦はいったい何で食べているのだろう?

若い夫は仕事をしているようでもない

 

魔女

私は『頭が悪い!』という言葉は

世の中でNGワードだと長いこと思っていて

使い始めたのは40代後半に入ってからなのだが

その頃の私に教えてあげた

その女は頭の悪い、怪しいやつなのだ

しかし、その頃の私にとっては不思議な人でしかなかった

 

「あなた、腰のあたりに霊が見えるわ!

きっと、水子の霊よ

私、除霊もできるからやってあげましょうか?」

 

私には意味が解らなかった

水子の霊?いったい何なんだろう?

その頃はスマホもなかったし、まだ貧乏学生は

パソコンすら持っていなかった

私は辞書が手放せないほど、検索魔だったが

その時は正野さんの家だったので

手元に辞書がなく

霊がついているなんて、なんて気持ちが悪いことを言うんだろう

でも、本当だったら怖い

そんな除霊をこんな幼い子供の前でやってもいいのだろうか?

私には漫画で読んだ恐山のイタコのイメージが頭に広がった

魔女

田舎の高校ってやつは、本当に同じ価値観がで成り立っていて

ちょっと、違うことをしただけでも不良呼ばわり

そして、その不良ですら同じような人たち

高校を出て1,2年、東京に出て来ても

周りはほとんど学生、それも偏差値が一緒くらいなのだから

真面目な同じタイプしか知らなかった

この正野って人は、私にとって

?だらけの人で、反発するほど私に経験がないから

何となく話を聞いていた

そのうち、幽霊は信じるかという話になった

私の答えを彼女は待っていないまま

当然、信じているかのように話し始めた

 

「私ね、霊が見えるのよ~

すごいでしょう?」

 

それがすごいことなのと思う前に、嘘とは思いたくなかったが

こんな不思議なことを、今、知り合ったような私に

なぜ言うのだろう?

そんなこと、信じていても人との話題にするのは

知性のない嘘つき女と思われるかもしれないのに

魔女

お母さんなのに長い髪

今時ではこんなことは思いもしなのだろうが

私は母のことや、知ってるお母さんたちは

だいたいショートカットか後ろで結んでいる

まぁ、あの頃、おしゃれな人が周りにいなかった

私自身、高校の頃まで父の友人の散髪屋に行っていたせいもあって

千円の所を500円にしてくれるおじさんに切ってもらっていた

あの頃、女子高生でも長くはおろしていなくて

ものすごくおしゃれな子でも肩までくらいだったし

おばさんたちはたいがい、長持ちするように

きつめにかけたパーマのショートカットだった

あの『ちびまる子』ちゃんおお母さんの髪型だ

 

正野さんは私から見れば、年齢は20代後半で

充分、おばさんの顔に見えた

 

それが、その頃人気があった小林麻美のような髪型をしていて

そのときの私には、そんな芸能人のファンで

芸能人と同じ格好や髪型をする人がいるとは思わなかったので

なんだか、不思議な人だと思った

今、考えれば正野って女は小林麻美になりきっていた

痛い人だった

魔女

そのころの私には何一つ見えてなかった

正野さんって人は子供をだしに私と話したかったようだ

私に興味があったとかではなく

人と話すのがただ単純に好きだと言う感じだった

 

実は私は学生でくうちゃんを預かっているのは

夏休みのバイトなのだと説明したかったが

彼女はひたすら、自分のことを話したがって

私には説明する暇もなかった

私自身、遠慮がちな所もあるので

彼女に限らず、相手の話を遮って話すことは出来なかったころのことだ

 

おもちゃはなくとも小さな女の子二人は

部屋の隅で楽しく遊び始めた

 

正野さんはそのころではめずらしい

ハーブティーを大人二人だけに淹れて

砂糖は入れない方が美容にいいなんて言いながら

おしゃれな感じにテーブルに置いた