発達障害の母

どうしてなんだろう

あの弟なら田舎のやれる子をひっかけるのに

苦労することはないだろうに

そう、考えはしたが、実際に彼女が妊娠しているかどうか

はっきりしたことはわからないのだ

そんな日々が続いて,はて、どうしてものかと悩んでいると

朝の五時ごろから散歩に行く母親が帰ってくると

 

「ちょっと、あそこの女の子

これから、学校行く前にランニングをするんだって

今日から走り始めたんだよ

赤ちゃんができたなんて噂してわるかったよ

ちょっと、太ったから気にしてんだってさ」

 

私はびっくりした

それこそ、違うと思った

あのタイプの女の子がランニングなんかしない

だって、今の時期、受験勉強が大変になるころだし

もしかしたら、運動をして無理して赤ちゃんをおろそうと

しているのではないだろうか

発達障害の母

こういう話の時に母の瞳の奥に

口ではいやらしそうに話すのに

嬉しそうな光が宿るのが悲しくなる

そう聞いてから、私はできるだけまめに

その窓を見ることにした

弟というのは、この辺りの中学生そのものだ

悪でもなければ真面目でもない

私の同級生にもたくさんいた

ただただ、今、目の前が面白ければいい

しかし、ここを出るなんてことや、

町の駅の裏の怪しい場所には足は踏み入れられない

高校も近くの商業高校があるから

親さえお金を払ってくれれば、中卒にはならない

ただ、身長の高さと顔がその辺の田舎の男子ではなかった

今までは気が付かなかったが

家の周り中学生の女子がうろうろしていることもある

発達障害の母

だから、この土地に帰ってくるのは嫌だったのだ

母のような人間が大手を振って生きていける場所

母が発達障害ならば、周りの人間はまるで正気ではない

でも、わかってはいる

だって、ここで生きていかなければならない人間にとっては

どんな悪口を言いながらも

お互い家の中で悪口を言うくらいにして

適当に受け流していかなければならないのだ

子供のころ、そう感じていたことを忘れていたのだ

 

「でも、まさか、だっ・・・て」

 

「まぁ、あそこがそうとは言わないよ

でも、姉弟ったってやればできるんだからね」

 

「でも・・・・」

 

「それがね、ここから二階の部屋が見えるだろう

右がお姉ちゃん、左が弟だよ

夜中に二つとも明かりはついていても

時たまどっちか一つの明かりが消えて

そのあと、また二つの明かりになるんだよ

なんて言っても姉弟だから明かりをつけっぱなしじゃ

できないんだろうよ」

発達障害の母

「その子供はどうしたの?

誰の子供?」

 

「その子は子供が生まれるころ

拓ちゃんが結婚して、その奥さんと育てたんだよ

子供を産んだ、拓ちゃんの妹はどうしたの?」

 

「東京に出たんだよ

それで、水商売か何かやってて二号さんになったんだよ」

 

「ふ~ん。拓ちゃん、えらいね。

その奥さんもえらいな~

結局、父親はわかんなかったの?」

 

「だって、拓ちゃんの子だもの」

 

「え?」

 

私が絶句していると

 

「あんまり珍しい話じゃないよ

なんか、私が子供の頃にもあったよ」

 

「その子は今、どうしてるの?」

 

「ああ、幸せな結婚をして、子供もできて

拓ちゃんは良いおじいちゃんになってるよ」

 

 

発達障害の母

母は周りに誰もいないのに

コソコソとした目をすると


「ほら、村の入り口の

拓ちゃんところ

あそこの妹が孕んだ時ね」


「ああ、拓ちゃんって私より

2、3上だったよね

妹は確か私より3つくらい下の

ぼうっと、暗い子

あの子、子供とか産んだの?!

いつ結婚したの?」


「結婚はしてないよ

都会に出てどっかの金持ちの

二号になったらしいよ」


「へぇ、あんな子でも二号になれるんだ

それで、子供はその人の子?」


「それは、ずっと、後の話

あんたもわかりが悪いね!」


母は時間の流れで話すことが昔からできない

アメリカに行った時に

下層階級の白人が過去とか進行形とか

使えないまま話すのを不思議に思ったが

母もそんな日本語を話す


発達障害の母

男の影はない

でも、どこでもチャンスがあればできるはずだし

もしかしたら、たった一回のレイプだったのかもしれない

こうして、私が悩んで手をこまねいているうちにも

赤ん坊はどんどん大きくなる

そうなると母親の目に留まるだろうから

余計なお世話なのかもしれないが

高校生の頃を思い出す

世の中のことなんて何も知らない真面目な女子高生

性はおろか男子のことすらよく知らなかった

もし、あの頃の私がそういう目にあっていたら

どんなに心細く、悲しいだろう

放っておけば死を選ぶかもしれない

母と食事をしていると母の話が始まる

それは、本当にどうでもいいことで

最初はいちいち丁寧に相手をして、一喜一憂していたが

最近はすっかりスルーする癖がついている

しかし、母も知能が足りないとはいえ

敏感なところはあるから、傷ついてはいるようだ

私がすぐに飛びつく話題を話そうと努力はしている

 

「あのね、あの、姉弟、ちょっと、おかしいのよ

昔、村であったことをちょっと、思い出したんだけど」

発達障害の母

すると、誰もが

超真面目!しゃべらない!

父親が東京生まれとかで

田舎の子をバカにしている

ブス!すね毛を剃っていない

運動神経が悪い

弟がイケメン!

そんなことを話してくれた

友人はいない、休み時間も勉強してる

 

「彼氏はいないの?」

 

皆口をそろえているわけないじゃん!と言う

全く男の影はなさそうだ

 

「あ、勉強が好きなら先生と仲がいいとか?」

 

教師にもたぶん嫌われている、成績はいいけど田舎の教師をバカにしてる