発達障害の母

こういう話はドラマや小説では必ず

こんなひどい母だったけれど、最期は心が通じたとか

こんなに長い半世紀以上の間苦しんだけれど

やはり人というものは、それを享受して

享受したところに明るい未来がある

などと書きたいのは山々なのだけど、そんな風にはとても終われない

日本の殺人事件や傷害事件の内訳は

家族観が一番多いなんて話をどこかで聞いたことがある

自分が結婚をして築いた家族の関係からは

とてもそんなことは思えない

夫も子供たちも気持ちよく生活できる人たちなのだ

例えば、毎朝、パン食が日常だったとする

しかし、ある朝私がいきなり米食

理由も言わずに変えたとする

皆が朝はパンが大好きなのにもかかわらずだ

それでも、夫も子供も美味しいと言って楽しく朝食を終えて

何事もなかったかのように一日を始める

発達障害の母

もちろん、父はDV、パワハラ、をする人ではない

あの当時、九州の田舎の村だ

そんな風に父親がやったとしても

誰もが当然だと思うような時代だったのに

父は母のその恐ろしいほどのくだらないがの強さに負けてしまったのだ

私もそうだ、どんなに努力しても

どんなに心を砕いてもそんなものは全く通じない人間がいるのだ

私は、このままだと私も父と全く同じ轍を踏みそうだと怯えた

そして、このままここを出ていこうと決心した

発達障害の母

こればっかりは、どうにも我慢が出来ない

もちろん、人間として足りていないのだから仕方ない

そうほとんどの場合我慢するのだが

それにも限界がある

そして、お金の使い方。

バカバカしいほど見栄のためにしか使わない

ある程度までは父も多めに見ていたのだろうが

家計を脅かすほどとなると、

ダメな人間に文句を言われながら暮らしているストレスもあいまって

私が知っている最後のほうは口を利くこともしなくなり

ただ、家に帰れば酒を飲んでテレビを見ながら寝る

そんな人間になってしまっていた

弟はそんな父を軽蔑していたが、最初からそんな父ではなかったのだ

長い間、私は遠くから、もう少し父が人間として上位なのだら

やりようがあったんじゃないかと思っていたが

今回、帰って来て、やりようはなかったんだね父さん

今、お父さんの気持ちが心底わかるよ

そう言いたくなったのだ

発達障害の母

私は今のこの年になって、父の気持ちが初めて

手に取るように分かった

自分は娘だからまだ幸せなのかもしれない

夫であって、恋心が醒めた時の愕然とした気持ち

そして、全く使えない嫁であって

それだけならばまだいいと思う

母に父が失望したのは発達障害ではないと思う

とにかく、口を出すのだ

ご飯も毎日まともに炊けないのに、普通の人間よりも

数段落ちている生活、頭の使い方をするのに

とにかく父のすることに文句をつけるのだ

それがどこからの根拠なのかはわからないが

とにかく、上からダメ出しをするのだ

 

発達障害の母

もちろん、父方の親族

何よりも後妻でやって来た祖母とその娘にしたら

母に対して相当な思いがあったことだろう

やってきたら思う存分いじめ倒そうってことだったかもしれない

しかし、実際にやって来たのは

少し頭の足りない美人でも何でもない女

対等に相手にするのも阻まれるような女だった

父方の人間はどちらかというと哀れんだと言うほうが

正確な状態だっただろう

そして、それに一番苦しんだのは父だった

母そんな空気を読めるほど複雑な人間ではない

新築の家に母と二人で住み

ご飯の炊き方から教えなければいけない妻

そして、普通の人間のようにその知識が定着しない妻

それは生活全般に及ぶのだ

 

発達障害の母

うちの田舎は家がたくさんある村からは少し離れていて

小学校や公民館がある村の主な場所からは

10分くらい山に登って、父方の親族だけで住んでいる

そこに祖父の隠居所、本家、そして新しくたった新婚用の家

そこに強引に嫁に来た母

母はその頃、嫁いびりされたことをよく話すが

当たり前だと思う

そんな状態の父方の親族の中に飛び込んできたのだ

しかし、それが通ったのは公平に見ても父方の親族が

自由恋愛ってやつを受け入れたからだ

だから、嫁いびりされたのはそのせいではない

それどころか、温かく迎えようとしていたようだ

しかし、母は発達障害で空気は読めないし

普通の人が10分でできることを1週間くらいかかる

その頃の人間に発達障害などわかるわけもない

父自身だってまったくわからなかっただろう

親が決めて家まで建ててくれた結婚を積極的に受け入れたくない

そのぐらいの理由で母との恋に落ちてしまったのだ

発達障害の母

その時代のことだ、そんなに理不尽な話でもないだろう

新築の家や土地、そして牛一頭

他の村の人間が聞いたらうらやましがるに決まっている結婚だった

そこに入って来たのがその頃、青年団の活動に熱心だった母だ

母には癲癇持ちの妹がいた

母が高校を卒業して何か職業に就くことは無理だと感じた

祖父は母をその妹の守役として

青年団の活動でも二人で入っていれば、村の何かの役に立つだろう

そう思っていたのだろう

その青年団の交流会で母は父を見て積極的に交際に持ち込んだらしい

父にしてみれば、もう、親族の間では公認のいいなずけもいて

そろそろ結婚だが、その前の社会勉強みたいな感じだったようだ