逃亡

ショウは慣れてくると、おしゃべりなのがよく分かった

 

「それよりさ~ばあちゃん、チェリーにお金やったの?」

 

「やらないよ!」

 

すると、めちゃくちゃ嬉しそうに

 

「ほんと!!

よかった~!!!!

俺、赤ちゃん殺すのって駄目だと思うよ

だって、それって、命でしょう?

ほら、サスペンスドラマとかで命は大事だ!

どんな理由があれ、人を殺してはいけないって

よく行ってるじゃん!

だから、俺が頑張って育てるの助けるから

そんなことするなって、言いたかったんだ

今もばあちゃんにお金もらって、産婦人科の先生の

所に行くんじゃないかと心配で

後付けてきたんだ!」

 

やっぱり思ったとおりだ

ショウはバカだけど、いいやつだし、正直だ

 

「私もね産めっ!って言ってたところさ

これできまりだね

チェリー、そのお腹の子は産むんだよ!」

逃亡

「よけいな話しないで!」

 

チェリーがそう言ったが

私はショウにかまわないと言わんばかりに

 

「ショウはチェリーとどうやって知り合ったのかい?」

 

ショウはチェリーのほうを見ながら

 

「あ、えっと~

俺、バイトでチェリーの学校の花壇の手入れに行ったんだ

そのときに体育館の裏で

げーげー、吐いてるのを見つけたんだ

大丈夫かって聞いたら

うるさい!って言うんだけど

俺、そういうの放っておけなくて

『保健室一緒に行ってやろうか?』って聞いたら

俺んちに行きたい!っていうから

そのほうが楽習って、バイト抜け出して

俺のアパートに連れてきたんだ

後で抜け出したことばれて、すぐ首になったけど」

逃亡

「チェリーとの関係は?」

 

「彼氏っす!」

 

チェリーはむくれて、奥のベッドに座っている

 

「嘘だよ!」

 

「嘘だって言ってるよ?」

 

「え?だって、最近はしょっちゅう俺のところに泊ってるし

彼氏にしてあげてもいいって、言ったよな?

あ、でも、違うか!チェリーがそう言うのなら

えっと~友達です」

 

すぐに男と寝そうなチェリーのことだ

どっちも本当なんだろう

 

「で?なんでお金がいるんだい?

あんたが、えっと~ショウか

ショウが彼氏なら、チェリーのお腹の子の

父親なのかい?」

 

「あ、それは違います

チェリーのお腹の子は、今、三か月だから

えっと~チェリーと知り合ったのは

二週間前だし」

 

ショウはチェリーの二倍はバカだが

正直者のようだ

正直はどんなに賢い人間よりも価値がある

私はショウを信じることにした

逃亡

「今の男って・・・・

おばあちゃん、うちはそんなに男好きじゃ・・」

 

玄関でガタガタッと音がした

 

「誰か、連れて来たんだろう?

この寒いのに、外じゃな可哀そうだよ

入れてやりな!」

 

「連れてきたわけじゃないの~

もう、早く帰ればいいのに」

 

私がドアを開けると、ひょろっとした男の子が立っていた

 

「入りな!」

 

「あ、すいません。

チェリーに怒られるから、ここにいます」

 

「バカだね、いいから入りな!」

 

彼は入ってくると、きょろきょろしながら

 

「あ、すげえ~やっぱ、ばあちゃん金持ちなんだ

チェリー、お金もらえた?」

 

「名前は?」

 

髪の毛は短めで色が白くて、背は高いが

こいつはチェリーの二倍はバカそうだ

 

「あ、ショウです」

 

「大人に自分の名前を言う時は

ちゃんと上から言うんだよ!」

 

「園先庄司です。」

 

「歳は?」

 

「あ、17です」

 

「学校は?」

 

「行ってません、今日はバイト休みで・・・・」

逃亡

チェリーはくねくねして、困ったように落ち込んでしまった

他に隠していることがあるんだろう

私が気が付いたキスマークは昨日や今日のものだ

拓とは一回きり、計算で言えば3か月前のことだ

動画で見た限り、えらい、いい男で

再生回数だって半端ない

あの男がこんなしょぼい女の子を二度抱くなんて考えられない

何が『軽くない!』だ今チェリーが着ている

ウルトラライトダウンの中の羽より軽い

 

「今の男はどんなやつなんだい?

だいたい、そのおなかの赤ちゃん、本当に拓の子供なのかい?」

 

女の子ってやつは夢みた恋と、本物の肉体関係と

錯覚しやすい

バカなんだろう

チェリーはその中でも、かなり下のバカだ

拓には抱かれてもいないのに、そう思いたいのかもしれない

 

さっきから、部屋の外に人がいる気配がする

安いアパートだし、私の声は結構高い

逃亡

「一回寝たら終わり!

そんなことはわかっていて、ストーカーみたいに付きまとって

避妊もせずにやっちゃって、いや、やってもらって

私に言わせれば、拓ってやつに悪いところは一つもないね

そして、妊娠したら産みたくないってか?

チェリー、いい加減にもほどがあるよ

そのお腹にいるのは、命だよ!

頭が悪いだけならともかく、真面目でもないとなると

いったい何のために生きてるんだい?

その子を産むことが、お前の生きる目的さ!

祖母ちゃんが決めてやるよ!」

逃亡

「ちょっと、その動画見せて見な!」

 

見れば、まぁ、イケメン!

 

「間違いなく、この、拓ってやつの子供なのかい?」

 

チェリーは怒って

 

「うちはそんな軽い女じゃない!」

 

笑うしかない!こんな奴と寝るのだ、軽すぎるだろう!

この顔ならば、けっこうな顔のいい子が生まれるんじゃないか?

それに、こうして自分をアピールする能力にはたけている

 

「産もう!」

 

チェリーは驚いたように目を白黒させているので

 

「産みたくないのかい?」

 

そう聞いてみると

 

「えっと~、産んでもいいけど~

ママは気が狂うだろうし、

パパは、もっと、何にも言わなくなるだろうし

お兄ちゃんには縁切られるだろうし

私はまだ、高校生だし・・・・

育てられないし・・・・

何よりも拓はパパになってくれないよ」

 

「あたりまえだろう!!!!」