発達障害の母

それでも、私自身は父がそうであったように

母のようなタイプの異性に弱いのかもしれない

コンプレックスを抱えて自信と言ったら

何とか大学に合格できた事実だけで

それもガリ勉の末の話で

東京の余裕がありそうなスマートな学生の中で

毎日、泣きそうだった

バイトももちろんしなければやっていけないのだが

それすら怖くて、小さな立ち食いのうどん屋に決めたのは

ここなら怖いことはないだろうと

田舎者なりに考えたからだ

最初の入学金は父が出してくれたが

後は奨学金とバイトで何とかしなければならない

服はジーパンとトレーナー

ちょうど、バブルのころでブランドで身を固めた

女子大生がちやほやされていた頃だ

同じようにうどん屋でバイトしていた静岡から出てきていた

恵子ちゃんも同じような感じで二人で質素に

でも、まぁ楽しい学生生活を送ったものだった

 

ひょんなことから私がヒロミと出会うきっかけになったのが

恵子ちゃんの一言だった

 

発達障害の母

母には絶対に変えない個性と思い込みがあって

私はそこが苦しく、たまらなく嫌いなのだが

それは発達障害の人間特有のもので

許せはしないが、私のこの家を出てからの価値観をすべて覆した

人間なんて死なずにいさえすれば幸せなのだ

発達障害の母と酒を飲むだけの父

誰も私の将来など心配しないし

私の日々の楽しみも、すべて、否定して

母を否定できずに苦しむだけの子供時代

それも、もう、いい思い出でしかない

恋ちゃんに適当にアドバイスをする

 

「ああ、そんなにうまいんならば、今時ならば

NHKののど自慢とか視聴者参加番組なんかたくさんあるから

どんどん応募してみれば?

こんな、頼りない親戚よりも、よっぽど手っ取り早く

結果がわかると思うよ!」

 

発達障害の母

緊張して私を見ている恋ちゃんの目を見て

私は、どうでもいいんじゃないかと思った

ここで、真面目な親戚を装って

歌手なんか歌がうまいだけではどうにもならないから

勉強をしっかりやって、まともなところに就職しなさい!

ここに帰って来たばかりの私ならば、そう、言ったかもしれない

しかし、母と暮らし、田舎の人たちの中に入って

価値観がすごく変わって来ていた

何でも、犯罪にかかわらなければ・・・犯罪になる場合も

たくさんある気もしたが・・・

好きにすればいい

この、軽いヤンキーの母親の子供に生まれたのも

恋ちゃんの運命だし、ここから歌手を目指したければ目指せばいい

恋ちゃんがどんなにまじめに勉強をして

田舎の役場や農協に就職できたとしても

それが楽しい人生かどうかなんかわからない

発達障害の母

その彼女もうまかったし

最初は事務所にお金を出してもらって

華々しくデビューしたのだが

それも、ほとんど売れずに、その一曲をもって

地方を回って回る人生

結婚もせず、親に山を売ってもらってCDを出し

親に田んぼを売ってもらって、各地に歌いに行く

いや、それもいい

彼女は今もそれをやっていると言う

今では飲み屋を回って回って、お客のリクエストを歌う

もう、50は過ぎているのだ

まぁ、先祖代々の山や田んぼを売った親も

彼女もそれでいいのならば、私が何か言うべきことなど

何もない、人それぞれ幸せの基準は違うのだから

もしかしたら、私の人生よりも

彼女の人生のほうが素晴らしいのかもしれない

田舎の人の目を気にして、都会の常識に必死でついて行った

私の人生なんかむなしいものだ

発達障害の母

私は慌てて止めようとするし

恋ちゃん自体は恥ずかしくて、なかなか歌い始めない

その、母親だけが歌えと叱り

母は

 

「恋ちゃん、頑張って!歌手になれるかもよ」

 

いい加減なエールを送る

恋ちゃんは母親が激怒寸前になって初めて歌った

私は素人で耳もよくない

だいたい、音痴だ!

でも、この子がうまいのはよくわかった

でも、歌手になろうって人はたいがいうまいだろうし

うまい人の中でどのくらいなのかはわからない

さて、どういったものか・・・・

実はうちの親戚には。もちろん、遠い親戚だが

演歌歌手がいる

テレビに出たことはないし、全国の温泉なんかを細々と

回っているらしいのだが

その人が、多分、もう、私より歳が上だ

うまい!

発達障害の母

母親が反対ならば、何の問題もない

母はその母親のために灰皿をだしたり

コーヒーを淹れたりする

 

「久しぶりだねぇ

なんか、小学校以来だしね

お姉ちゃん、東京で立派な生活してるんだって?」

 

子供のころ、親戚一同、年上ならば、

お姉ちゃんと呼んだことを思い出した

こんな女にお姉ちゃんなんか呼んでもらいたくないと

考えながら

 

「恋ちゃん、歌がうまいんだってね

でも、大丈、、まだ中学生いでしょ

うちのも、そんなに伝手はないから・・・」

 

そう私が言おうとすると

 

「ちょっと、恋、歌ってみな!

スマホのカラオケで、ほら、あれがいいよ

安室奈美恵のあれ、結婚式で歌うやつ」

 

発達障害の母

それでも、母は約束したんだから

何とかしてちょうだいと断ろうとはしない

そして、日曜日はやって来た

やって来たのは真面目そうな可愛い女の子だった

その母親もついてきた

ああ、久しぶり、というか子供の時以来だ

金色に染めた髪の毛は上のほうは真っ黒だ

ああ、確か私が小学校の6年くらいの時に一年生

私はこの手の女に偏見がある

痩せていて、髪の毛は長くおろしていて

タバコを吸う、そして、お金に汚くて男好き

じゃないだろうか?そう思ったが母にはそこまでは聞いてなかった

だいたい、母親が付いてくるのならば

反対しようと言う話だろう