おばさんであること

大輔の純粋さに嫌気がさしてみると

妹のほうが随分まともな気がする

スミカは自分の環境を受け入れ

そして、正直に話、満里奈に気に入られた

これからどうなるにせよ

二十歳の女の子が今までやれることを考え

そして、毎日を自分の力だけで生きている

それは、すごいことだ

妹のほうだって自分で考えて歩き出そうとしている

それは親の考えからは逸脱しているし

それで、素晴らしい人生が送れるかはわからないが

まず、世間をしっかり見て、自分の嫌いで不得意なことをする意味

そこを、ちゃんと考えられるのならば

いつまでも、お子様でいる兄より大人な気がする

おばさんになること

母親に自分の恋愛相談をする高校生男子

美也はやはり、大輔は純粋すぎて

育てるのに失敗したんじゃないか?

そう感じてしまった

 

「母さん、僕は彼女のこと

どう忘れればいいかわからないんだ

いい子だったでしょう?

僕のこと好きだって言ってたし・・・

連絡が出来ないってどういうこと?」

 

今までは純粋で真っすぐな大輔のことを

自慢に思っていた

勉強だって高い目標を置いて頑張っているし

でも、美也はイラついた

しかし、そんなことはおくびにも出さずに

 

「スミカさんがあなたに会いたいのならば

この家を知っているんだから

会いに来れるでしょう?

あなた、振られただけよ

もう、あきらめなさい」

 

大輔は体の関係があったことで

彼女が自分を本気で想っていると信じているのだ

しかし、世の中の女の中には好きでなくても

軽く男に抱かれる女もいるのだ

美也はそんな女を否定しないし

スミカの気持ちはよくわかった

 

おばさんであること

大輔は焦って、何度もスミカの連絡先を調べているようだが

スミカはもともと、ネットカフェみたいなところに住んでいたのだ

住所もわからなければ、スマホの連絡先も

削除されたんだろう

イライラして落ち着かない大輔に

妹が嬉しそうに

 

「お兄ちゃん、振られたんでしょう?

良かった!あんな女を家に連れ込むなんて

お兄ちゃんの本性が見えたよ!」

 

そう言って、中学受験は辞めてしまったことで

のびのびと嬉しそうだ

大輔は美也を見ると

 

「あいつ、僕のせいで中学受験、辞めたのかな?」

 

「もともと、勉強が嫌いだったんだから

良かったんじゃない?

スミカさんとあなたが引き金だったのは確かだと思うけど

ママは良かったって思ってる

あなたと違って勉強がかなりなストレスになってたし

自分で選んで公立に行くんだから

それはそれで、いいことだと思うわ」

 

大輔は自分がスミカをこの家に連れてきたことに

思いのほか母が怒っていない

それは、何故なんだろう?

母はやはり、他の母親のように差別の目でスミカを見なかった

そう思うと美也を頼りたくなった

おばさんであること

明美は少し呆れていたが

美也と二人きりの時に

 

「満里奈って、もしかしたら

ほら、あの、高校卒業した頃に好きになった人

ほとんど、ヤンキーみたいなトラックの運ちゃん

あの人との間に子供が出来ていたら

スミカみたいな子だって思い込んでるんじゃない

だから、スミカに肩入れしてるとか・・・・」

 

ああ、そうかもしれない

ただ、どこの馬の骨とも知れないスミカを

いきなり、家に入れるなんて、なんて無謀なと感じていた

 

美也としてはどこか住み込みの仕事を紹介でもしてくれていれば

それだけで十分だった

明美は大輔のことを聞きたそうだったが

美也は大輔がスミカをどう思っているのか

どうしたいのか、うんざりするような気持で見ていた

スミカのほうには全く大輔を気にするなんて気持ちは無さそうだ

おばさんであること

「私が、今、なんで食べているか

知ってるんでしょう?」

 

スミカは美也を見てから、満里奈を見た

もちろん、美也がそれを話しただろう

しかし、こんな自分を引き取るなんて

もしかして、美也は話していないのだろうか?

美也は大輔に似て、いい人だから

スミカはそう思ったが

 

「わかってるわよ

でも、他の仕事に就けないから、しかたなくでしょう?」

 

スミカは頷いた

もちろん、お金があるならば絶対しないことだ

大輔のことは本当に友人の敵討ちだった

 

「じゃ、問題ないわ

最初は私のうちに住んで!

荷物はそれだけ?

私は一人暮らし、夫はいるけど

今はアメリカに勤務していて、ほとんど帰って来ない

まずは買い物をしましょう

下着、そして、洋服もね!

あなたのセンスが私の好み通りでなくても

遠慮なく言ってほしいの

お互いが歩み寄って、センスのある売れる服を

セレクトして行きましょう」

 

スミカは初めて心からの笑顔になって

頭を下げた

美也はあまりのトントン拍子にちょっと、心配になったが

満里奈が引き受けると言ってるのだ

信じるほかはない

両方を・・・・・

おばさんであること

スミカがすかさず言った

 

「大丈夫じゃないかもよ!

施設で育ったって言ったって

一緒の施設には真面目でいい子もいたよ

高校も偏差値の高い所に行って

奨学金で大学に行ったり

美容師になって真面目に頑張ってる子いるの

私は中学のころからフラフラしてて

勉強もしなかったし

万引きで捕まったこともあるんだよ」

 

スミカははっきりとそう言った

満里奈の家に行きたくないのだろうか?

美也も少し困ったのだが

満里奈はじっと、スミカを見つめて

 

「そう言う感じ、悪くないわよね

あなた、洋服好きなんでしょう?」

 

満里奈は物は持たなくても、その髪型や

古いジャージもおしゃれに着ているところに目を付けたのだ

今の話にスミカが目を輝かせたのにも

ちゃんと気が付いていた

でも、しっかり自分のリスクも話すっていう所は

気に入った

そういう所は賢いところだと思う

おばさんであること

満里奈を見てスミカは開口一番

 

「おくさま!」

 

満里奈は笑いながらスミカを注意深く見た

汚いジャージのような上下を着ていて

髪の毛も脂ぎっている

スミカは美也にとりあえずのお金をもらっていたから

また、ネットカフェに籠っていたのだ

でも、顔立ちは美しく、やせ細ったそのスタイルは

モデル並みの美しさだった

 

「ねえ、美也

私、箱根にあるホテルの中居さんを紹介しようかと思っていたんだけど

もったいないよね〜

私、ブティックを始めたいって思っていたんだけど

この子、そこで働いてもらうわ

とりあえずは、うちで一緒に暮らして

立ち上げるとこから、がっちり手伝ってもらうわ」

 

美也は満里奈を不思議そうに見つめ

もし、スミカがは何罪を犯すような子だったら

どうするのか?

そう、聞きたかったがスミカの前では言えない