恋をしたとき
「高校は停学処分になって、家にいるらしいんだが
章子はそこに訪ねて行ったらしい」
速水は母を想った
「お母さんがお父さんと一緒になるまで
どれだけ年数があったと思う?
あの日々がなかったら
二人はもっと、幸せな時を長く一緒にいられたんじゃないかしら
二人してほとんど一緒に亡くなったことを考えたら
お母さんが、あんなに躊躇する必要はあったのかな?」
「止めるなって事?」
「うん。だって、しょうがないじゃない
なるようになるんじゃない?
まともな人生からは何も生まれない
お母さんは最後、おばあちゃんがああだったから
今の幸せがあるって言ってたし
私があんな世界に飛び込んでも仕方ないって思ったのは
おばあちゃんがいたからだと思うの」
「ふ~ん、確かにそうだろう
僕があんなに頑張って勉強したのも
母のおかげと言えばそう言えるかもしれない」
「章子ちゃんがボロボロになって帰ったときに
何も言わずに迎えてあげればいいんじゃないかな
だって、雅紀君自体は悪い人じゃないんでしょう?」