姉のこと

小学生だった康太には

この家に生まれてそんなことができるなんて

考えられないことだった

姉が帰ってきてくれて嬉しい

でも、中学受験が出来る家にはなれないと思う

小学校でも中学受験をする家の子は

ちゃんとした家だし、勉強熱心な母親がいる所だ

あの悪ガキにしたって、祖父や父親は土地持ちの

遊び人だが、母親が受験させたがっているのだ

姉の言葉をそのまま信じていいのかどうか

迷ってしまう

「お姉ちゃんも、たぶん、康太と同じこと思ってた

こんな家に生まれたら、まともな人生なんか歩けない

私はまともに高校にも行けなかった

とくに女は勉強するなんて馬鹿だって

母さんがしょっちゅう言ってたしね

でも、康太は違うわ！

勉強できないのにうちみたいな家でお金を使うのは

もったいないけれど

康太は勉強が好きでよくできるんだもん

お姉ちゃんにまかせて！」