速水の悩み

タケオは速水が買ってくれた格好そのままに
沙羅のバイト終わりを待って
店に入っていくと、一緒に帰らないかと誘った
もちろん、帰り道なんかまったく違うのだが
そんなことかまわない

「え?タケオ君こっちのほうに住んでるの?
あ、もしかして実家に帰ってるの?」

電車に乗ってから沙羅が言うのを

「いや、今は恵比寿に住んでるんだ」

「え~じゃ、帰り道じゃないじゃん
一緒に帰ろうって!全然逆方向だし」

「沙羅の帰り道だから、その道を一緒に帰ろうってことさ」

沙羅は昔の生真面目で勉強ができて、さわやかだった
タケオの口からそんな言葉がスラスラ出てくるのを不思議に思った

「やっぱり、留学とかしてくると変わっちゃうんだね」