速水の悩み

「その女の子って?」

自分の感情は押し込んで話を聞く
タケオもまさか、稀代のネットエロスの嬢王
自分に恋したとは思わない
気を引いたのは成功したようだが
実際彼女が好きになる相手なんか有名なIT企業の社長とか
俳優とかセレブに決まっていると思っていたから
呼ぶ回数を増やしてもらえればいいくらいの魂胆だった
だから、言われるままに話し始める

「それが。同じ中学だった女の子で
クラスのマドンナみたいな子だったんだ
俺にとっては当時、高根の花だったし
まぁ、高校受験でそれどころじゃなかったんだけど
その彼女がフラット入ったコンビニでバイトしていて
俺に気が付いたんだよ
俺、逃げようとしたけどさ
その子が背中から
『私、中学の頃好きだった!今もずっと、好き!』
そう言われてさ
もう、忘れていた記憶とかすげぇ、よみがえっちゃって
彼女のバイト終わりを待って
お茶したんだけど
なんか、俺もときめいちゃうんだよね」

そこまで言うと、困ったように話を辞めた

「で?」

なんだかイライラして聞いてしまう
ダサい私服、それは昼の男の子の物じゃない
目がちゃんと見える子ならば
その服装はセンスが悪くてお金のない水商売の男のものだ
なんてことはすぐに気が付くはずだ
ただ、タケオは髪型だけはホスト風にはしていなかった