速水の悩み

今、昨日の速水ならば、そう言ってタケオにお金を上げただろう
でも、それはできない
今、速水はタケオの好きだと言う
その素人の彼女に嫉妬しているみたいだった

速水は今まで、男の体を欲しがることがあっても
恋はしてこなかった
やっていることは普通の人ならば
恋をした最終形なのだ
それは速水にとっては単に欲望と仕事だ

タケオに今の一時間くらいの間に
心を持っていかれた

自分でも理解できないが、そうらしい
そして、自分はあこがれられる存在にはなれそうだが
タケオの恋の相手にはなれない

あんなふうに真っ赤にうつむきがちに
速水が好かれることはない
それは、わかっているが、
それとともに、何言ってるの、あんた男娼だよ
素人の娘にときめいてんじゃねえよ
そんな意地悪な心が持ち上がってくるのを止められない