手に入れた物

「父や私がお宅のお母様のおかげで
楽しく幸せにしていただいていたころ
今回、遺産はどうしても受け取っていただきたくて
私立探偵に調べてもらったんですけれど
ミキさんのほうは大変だったみたいで
ほんとうにごめんなさい
今更ですけど、ぜひ受け取ってほしくって」

ミキはこの、まっすぐで
母親が早くに亡くなって
父親に愛情をすべて注いでもらった女を見つめた
今の夫と出会って、子供もできて
幸せになっていなければ
この人のように生きてきたかった
そう、嫉妬したかもしれないと思った
あの、母とかかわって幸せだったなんて信じられない

でも、彼女は父親と住んでいた母を
気持ち受け入れる心を持っていた
立派な家の誠実な男と暮らしたからと言って
母の下世話で知能の低い生活の仕方が
もっと、ましだったとは思えない