康太の深淵

「え?それって、弁護士さん
私に話を合わせようとして作ってない?」

康太は笑い出した
それなら、どんなにいいだろう

「君のお父さんよりも家にいなかったよ
僕のお母さんはね・・・・・
好きな男といることだけが
人生の楽しみのような人だった」

子供に話すような言葉で始めたが
内容はとても子供向けではないのに気付いて

「うちの母は母であろうなんて一分も思ってなかったと思う
僕はそれでずいぶん悩まされたけれど
悩まされた分、自分の道を探せたんだよ
君もお金をもらうことなんかにこだわるなよ
マニュアル通りのお母さんを嫌っているように
君もマニュアルに縛られているよ
子供はこうあるべきなんかないし
人間はこうあるべきなんてこともないよ
法律さえ守れば、何したっていいんだよ」

「え?弁護士さんがそんなこと言ってもいいの?」

優未はすっかり康太に魅せられた