康太の深淵

その目はまっすぐに康太を見つめてきて
本当に母親にそっくりなのだ
父親は目も合わせたくなさそうに話す

「いや、お母さんは君と住みたいけれど
君が嫌なら仕方がないと考えを変え始めているよ
ただ、お父さんに君のすべてを託すとなると
金銭的に無理だろうから
養育費は君に直接あげたいって話なんだ」

優未は唇をかんだ

「そうでしょうね
でも、お金をもらったら意味がないわ」

康太はこの不思議な少女に魅せられた
康太から見たら母親の鏡のようなあの母親を毛嫌いしている
康太のこの年頃の頃のようだ
でも、康太はあんな母親ならばどんなに嬉しかっただろう

「君はこれから将来、やりたいことはないの?
これといった具体的なものじゃなくてもいいけど
普通の社会人になるには、最低限のお金がいるよ」