康太の深淵

すると、ばつが悪そうに
ブランドのバッグを持って来た

「これが欲しかったから
買ったんだけど、ごめんなさい」

ああ、それならば別に構わない
確かに専業主婦なんだから
女の人が自分を飾るものを買いたがるのは
当然のことだろう
姉のミキはあんな性分だったから
そんなことにお金をかける気もなかったろうが
康太は自分の周りの女性の仕事仲間を
見回すと、それなりの格好をして
それなりのものを持っている

「ごめん。女の人のそういうの
全くわからなかったから
別に君の美容代?みたいなやつはあげるよ
金銭的な余裕はあるから安心して」

そう言って自分のカードを渡した