全く何もないまま

それで、幸せだったのに
若い張り切ってる学校の担任は
すぐに家庭訪問にやって来た

「ここで、生活しているの?
お父さんとかお母さんは?」

学校の書類には適当なことを書いていたから
保護者の名前はじいさんと江さんになっていた
江さんは夕方から爺さんたちの客が多くて
これくらいの時間は忙しいのだ
じいさんが黒の蝶ネクタイをしたまま
先生を迎えた

「あ、あっしが父親代わりで
母親代わりのやつは、今、指名がかかっておりやすから
すんませんが、あっしが話を聞きますぜ
えっと、坊主が何か問題でも起こしましたか?
勉強しないんなら、尻でも叩いておきますぜ」

先生は何と言っていいのかわからないほど
驚いて、真っ赤になった