.....の無い

沢村の書いたその文を
そのままビジュアル化したような
ミキに会うのがいちばんの楽しみだった

ミキは沢村の小説をこっそり何百回と
読んでいた
そして、そのヒロインが
もしかして自分ではないかと思うよりも
そのヒロインが羨ましく
そのヒロインに嫉妬して
そのヒロインに近づこうと
何をやるときもそのヒロインになっていた

もちろん、みつほはそんなことは全く知らない
それでも

「ねぇ、お姉さんと沢村教授は
お知り合いじゃないのよね?
会ったこともないんでしょう?
お姉さんのあの雰囲気は
あの、ヒロインそのものよね」

そう言われて康太は母親のことで
忘れていた沢村とのことを思い出した