刷り込み

おばさんは、その彼の優しい

笑顔を見て、心の中で


『かかった!』


そう叫んだ


カルティエの時計

ブランドの服

レンタルのバッグ

そして、何より芸術品のような靴

タクシーで、乗りつけるから

歩く必要はない


自分の小さなアパートの前でタクシーを降りると靴を脱いで、裸足で部屋に戻った

その靴は履いて歩ける代物ではない


月、6万円の部屋

部屋の中は商売道具の、今着ているものを入れる大きな段ボール以外何もない

布団が敷きっぱなし

布団の上に脱ぎ散らかしている古いジャージの上下

それに着替える