発達障害の母
「俺たちもびっくりしたさ
あそこの父親がよそで作った子供だって
突然連れてきたんだよ
ほら、あそこの父親ってよく、県庁のある街に
遊びにいってただろ
あのあたりの飲み屋の女に
生ませたらしい
あの妹が中学生の時に、その母親ががんで死んだって」
この村にはまともな普通の家庭なんて一軒もないのだ
皆、何かを抱えている
そして、案外、そういうことを受け入れているのだ
「雅ちゃんのお母さん、偉かったんだね
雅ちゃんと妹が差別されているなんて
聞いたこともなかったから」
「そりゃあ、俺らみんな、うんざりするほど
雅ちゃんには悩まされていただろう
あんなに性格の悪いわが子よりかわいかったんじゃない
結局、結婚もせずに雅ちゃんが出て行ったあと
家で、何かと親の面倒を見たのは妹のほうだったしな」