母はマニュアルとして人間関係のやり方を覚えている
その学習はかなり見事なものだ
人の悲しみ、病気になった、死んだなどは割かし簡単だ
悲しんだふりをすればいい
だから、母はそんなふりはうまいが涙は出せない
しかし普通の人はふりがうまいとは思わない
こんなに他人事なのに悲しんでくれてと喜ぶ
そうして、別れた後にケロッとしている母を
子供のころたくさん見てきた
私が母に対して最初に思ったのは
『嘘つき!』だった気がする
でも、私は父に似て感情は表さないほうが立派だと思っていた
だから、母のことを心の奥でそう思っていても
口にも顔にも出さなかった