コーヒーは美味しかった
県庁のある街でサラリーマンをしていたが
コーヒー好きが高じて、どうしても店を出したくなったマスターが
古民家をただ同然に買い取って、趣味で始めたのだ
私よりも10歳は若い、サラリーマン時代は仕事ができたであろうが
今は田舎のおっさんだ
私が入っていくとすぐにいつものやつを入れてくれる
私はカウンターに座りながら
その一番端っこに座っている女に目をやって
声をかけようかどうか迷う
たぶん、小学校の同級生だ
ここに来はじめてからすぐに気が付いていたのだが
彼女のほうがたいがい、昼からウヰスキーを飲んでいて
誰とも話したくないように俯いている