康太の深淵

「私たちは結婚が遅かった上に
なかなか、子供にも恵まれなくってね
ミツホは本当にやっとできた子供だったの
だから可愛くて仕方なかったし
完璧な子育てをしたのよ
私は高卒だし、夫も大した大学は出ていないの
でも、ミツホは小さな頃から
公文式や能力開発研究会みたいな
勉強をしたし
それよりもあの子自身がすごいのよ
普通、子供って勉強を嫌がるでしょう?
でも、ミツホは朝から晩まで
何も言わずに言われたことをやるの
あ、康太さんのお家は
お兄様が大学の有名な教授でいらっしゃるし
何かと素晴らしいんでしょうから
お恥ずかしい限りですけどね」

康太は自分の家族の話はごめんだった

「はぁ父も母も早くになくなりましたから」

そう口を濁して家を出た