康太の深淵

ミキの家から帰って来る
気持ちよく家庭的に整えられた姉の家
渡された紙袋には
美味しい姉の手作りの稲荷が入っている

家は自分が弁護士になってから
中古の小さな庭付きを買った
ミキが康太に渡してくれていたお金で
十分足りた

最初に選んだ時は
庭の小ささや少し昔風なところが
昭和を感じて
沢村の家に比べれば
格段落ちるが、雰囲気は似ていて
康太は気に入っていた

門から玄関までが小さな小道になっていて
そこには季節の品のいい花や
緑の気が植えられていた
最初は猫が遊びにきて
その風情を楽しませてくれた