全く何もないまま

「わかってる
正二さんの方が正しいって
でも、ダメなの」

どんな言い訳よりも
正二は、この恋が叶うことはないと思った

「できるだけ力になるから
まぁ、気が変わったら
頼むよ」

そんなことを言う
ミキも笑いかえす

正二はそれから余計
仕事に没頭して
自分の店で働いているミキを
ずっと思い続けていた

その間にじいさんが死に江さんも死んだ
今やかなりの財産を作ることもできたのに
正二は高級マンションも
高級車も美味しい食べ物さえ興味がなかった