何もしないまま

でも、ここの店に溜まっている人間たちは
正二を可愛がってくれるのは可愛がってくれて
絶対に飢えさせたり、手をあげたりする人間はいなかったが
ほとんどテレビの前に置かれたて過ごし
気が向いたらあやしてもらい
周りはいつもだらしない恰好した女たちで
卑猥な話に満ち溢れていた

正二は教育テレビが好きだった
それも、正二がチャンネルなどわからない頃から
江さんが年上の貫禄で

「正ちゃんは、ちゃんと、教育テレビで育てようや
私ら、きゃぁきゃぁ言ってばかりいるけど
この子は真面目に育てよう!」

そう言ったから、チャンネルを変えたくても
誰も変えられなかったのだ
だから、ここの風俗の女の子のたまり場は
ずっと、教育テレビが流れている不思議な空間だった