「お母さんがね老人ホームから
病院に運ばれて、それから一か月で亡くなったでしょう?」

康太はそのころ、まったく母のそばには寄らなかった
臨終にも立ち会わず
骨になって骨壺に入ったころ
顔を出したのだった

「病院に行ったらね、もう、ベッドから動けなかったから
私相手におしゃべりばっかしてたのよ
みぃもよく一緒に行ったけど
あそこは話なんかまったくないでしょう?
お金は全部みぃが出してくれたんだけどね
私も行きたくなかったけど
彼が行って来いよって言うから
あ、彼も結構問題を抱えたお母さんだったから
私たちみたいな感じじゃないけどね
ずっと、愛人さんだったんだって」

「でも、一人の人だろう?
うちみたいに、男なら何でもってやつじゃないだろうから
うらやましいよ」

「そうね、老人ホーム時代だって
やたらおじいさんにもててたって話
みぃが感心してたわ
みぃもそうなりたいって」

康太は母のそんなところは憎んでいたが
みぃに関しては哀れでならない