その先

でも、髪はバサバサで手の指の爪には

土が入っていて、真っ黒だった


「ちょっと、充に

いらん知恵をつけてくれちゃ困るよ

勉強ができたって

金持ちにはならんよ

うちは中卒だけどこうして金持ちに

なれたんじゃ」


そう言って父を見ると


「あんたの母ちゃんの志保さん

女学校まで行ったって

ずっと、貧乏で苦しんでいたじゃないか

あんた、忘れたのかい?

志保さんはうちより2歳上で

べっぴんで頭がいいって評判だったけど

長生きしたうちの勝ちや

子供の頃、字も書けんうちに

教えようと親切ごかしな人だったけど

見てみぃ、うちの方が幸せになった

金も入って、ありがたいことじゃ」


おばあちゃん!

大好きだったおばあちゃんのことを

そんな風に言うなんて

父も少し気色ばんだ