その先

その中学生の名前も忘れたが

私は彼の持ってきた本をまぁちゃんから見せてもらった

そしてその中学生に


「この子、この村でいちばんの天才

この本スラスラみ読めると思うよ」


それは山岡荘八の『徳川家康』だった

私は父の本の中にそれを見つけて

面白さに時間を忘れた


「あ、それ、読んだことある!」


何気にそう口から出てしまった

すると、驚いてその中学生が

私を見た


「嘘をつくなよ!

一年生だろ?」