ひとつ先

猫を抱き上げながら


「いいなぁ、うちも猫飼いたいな」


私は笑いながら


「飼えばいいじゃないか

お父さんは猫好きでね

小学校の時に猫を拾ってきて

ずっと、飼っていたんだよ

それが、初代アインシュタイン

田舎で飼うにはハイカラな名前すぎる気がしたんだけど

その頃、アインシュタインの伝記に夢中でさ

だから、今の二匹は

それをバラしてアインとシュタイン」


父親の話はなんでも嬉しそうに聞く


「へぇ、どこで拾ったの?

この二匹はどこからきたの?

ペットショップで買ったの?」


嫁はこの子は無口で喋らない

そう悩んでいるらしかったが

嫁と喋らないだけだ


「田舎の猫は野良だったんじゃないかね

学校に行く途中にビービー泣いていたのを

友達3人で1匹ずつ連れて帰ったのさ」


「どの家も反対しなかったの?」


「田舎だよ!どこも農家だからね

いたっていなくったって、どっちでも一緒

それに、昔の田舎は家にネズミがたくさんいたから、親は大喜びさ」


「へぇ、おばあちゃんちのアインとシュタインは?」