ひとつ先

その上、この近くのタワマンに住んでいる

何かとお金がかかるに決まっている

本人は絶対、専業主婦

今時、専業主婦は絶滅危惧種なんて言われているが

嫁のクラスの人間たちの間では

当たり前のことで

仕事をしているのは医者か弁護士の母親


私も世間的には専業主婦だが

農家の専業主婦だから

朝から晩まで、畑か田んぼに出ていた

自分が好きに使えるお金なんて

一銭もなかった


このアパートに引っ越してきたのは

爺さんが死んで

家が丁度、国の風車を作る計画の

区画に入っていて

周りの土地とともに大層な値段で売れた

息子が東京に出てきたらどうだ

一緒に住まないか

そう、誘ってくれたからだ