誘惑の花

そして、こんなに優しいのが意外だった

 

真っ暗な中、軽トラックから降りると

 

「ほら、ここ綺麗だろう?

あ、もしかして知ってた?」

 

美しい星空を見上げて、息をのんだ京子に

そんな風に話しかけてくる俊哉

京子は首を振りながら

 

「初めて!本当にきれいね」

 

美しい、振るような星空

京子はこの恋が、ものすごく姑息で悪いことだと知っていた

悪で有名な俊哉を立ち直らせた美奈子

そして、美奈子に誠実でいようと努力していた俊哉

これが、どこかの尻軽娘ならば

俊哉は絶対に目にもかけなかっただろう

京子のような極上の女が目の前に現れて

誘ってくるのだ

そして、その計算は京子自身がしかけたものだった

でも、この喜びは京子をそんな姑息な女に魅せず

俊哉はその素直で純粋な目で星を見上げる京子に

これを遊びにはできない、そんな予感がしていた