誘惑の花

ひと段落すると、コーヒーを飲み終わったのに

立とうとしない俊哉に美奈子が

しっかりした声で

 

「女遊びはしない!

仕事が終わったら、まっすぐここに来る

休みの日は一日私と過ごす

どんなことがあっても悪いことはしない

お給料は全部、私に渡す!

それを守ってくれるのならば付き合ってもいいし

結婚だってしてもいいわ!」

 

そこにいる誰もが、それは無理だろうと思った

最後の給料の下り

今で、福岡あたりまで遊びに出かけて

怪しい遊びはしていそうな俊哉にできるわけがない

だいた、福岡あたりまで行けば

俊哉は水商売の女に嫌ほどモテる

いくらでも俊哉に貢ぐ女はいるのだ

しかし、俊哉は躊躇せずに

 

「そうする!絶対そうするから!」

 

そう言って、次の日から俊哉は仕事が終わると

まっすぐここに帰って来て

中学以来の友人の啓介とも話もしなくなった

とにかく、仕事をしてお金を貯める

給料の管理を美奈子にやってもらって

二人で結婚するために貯金をすると言う