誘惑の花

佐由美は

 

「俊哉さんですよ~

私も彼にフラれたら、速攻、ついて行っちゃいます」

 

そんなことを言う

 

「でも、結局、付き合うことになるんでしょう

もうすぐ結婚するんでしょう?」

 

そう促すと

 

「ああ、それがね~俊哉は美奈子ちゃんに

本気で惹かれたんだろうな

毎日のように顔を出して、話し相手になってくれなくても

ひたすらやって来て、カウンターでコーヒーを飲んだんだな」

 

「そうでしたね~

あの頃、俊哉さんが美奈子さん目当てに毎日来るの

私、楽しみでしたからね」

 

「うん。それが、ある日、ほら、そこの製材所の社長が

カウンターで倒れて、救急車は呼ぶなって喚いたから

結局、俊哉と美奈子ちゃんで家まで送って行ったんだよ

社長は結局元気になって

ここのカウンターでお礼がしたいから

連絡先を教えてくれって二人を前にして言ったんだよ

美奈子ちゃんは別にいいからって、渋っていたんだけど

あの社長が粘るから、二人の目の前で連絡先をメモしたんだ

俊哉はそのチャンスを逃すわけないよな

あいつ、学歴はバカだけどそう言う時の暗記力は

半端ないからな~」