逃亡

シズカさんは自分のことを話したくてたまらないように

話し始めた

今まで、そんなことを聞いてくれた人は一人もいなかった

そんな感じで

 

「小夜子さんちから二軒先が私の家でね

6人兄弟の5番目

一番上の兄さんは、一生懸命勉強して県の仕事に就いたんだ

私もバカじゃなかったんだよ、小夜子さんをお手本にしてね

高校も同じところに行けたんだ」

 

私はその高校がそんなに立派だったか

少し不審に思った

うちの村から考えたら、少し頭の悪い子は

電車で一時間くらいの私立の商業高校に行くのだが

その頃はその商業高校が荒れていて

頭のよくない女の子はその高校にやるって言うのが

私の若いころの流れだった

その後、その女子校が偏差値が

急に上がったようなことは聞いてことがない

しかし、うちの村でのことで、それはそこそこに

違うのだろう

 

「高校を出たら、すぐに嫁に来てほしいって

同じ村の同級生に言われてね

そんなに好きとかそんな気持ちはなかったけれど

親は大喜びで、すぐに嫁に行ったんだよ」