逃亡

福岡のかずちゃんには

私は口にも顔にも出さなかったが

少し嫉妬していた

結婚した当時、かずちゃんはうちに遊びに来ることはなかったが

夫が遊びに行くと、なかなか帰してくれなかった

いや、夫も何時間でもかずちゃんと話していた

私たちが結婚した3年後くらいにかずちゃんも結婚して

福岡に嫁に行ったのだが

4,5年はまったく音沙汰もない日々があって

私はホッとしていたのもつかの間

その夫を病気で亡くしたらしい

そのあとは、子供もいない一人暮らしらしかったが

私の夫によく手紙が来ていた

それを読ませてもらったことはない

そして、盆や暮れに遊びに来いと何度も誘われ

夫は最初は日帰りではあったが、よく行くようになり

『飲んで帰れなくなった』と泊まることもあるようになった

 

村の人間はそんな夫とかずちゃんのことを心配して

私に何かと言ってきたが、私はこの頃には

あまり気にしていなかった

 

二人の間に何かが起こるなんて考えられなかった

本当の姉弟のようなものだと思っていたし

かずちゃんは大人しいいい人だ

夫が出来る範囲で優しくする気持ちはわかって来ていたのだ