逃亡

「うん。女に苦労したことはない!」

 

「それで、あっちのほうは?」

 

嫁に逃げられたもやもやして、腹立たしい気持ちを

自分の性癖の話に持っていかれて

シカオはだんだん、腹立たしい気持ちを静めて

冷静になって行った

 

「あ、都会ならその、金さえ払えば

えげつないことにも付き合ってくれる

店や女もいるしな」

 

私は頷きながら、こういう時、年を取ってよかったと思う

こんな話題、若ければ、この若い男に話すなんてことは

なかなかできないだろう

男たちは面白がるだけしかできないだろうし

 

「ここに帰って来てから、どうして、

そんな店がある町まで遊びに行かなかったのかい?

性癖なんか変わった奴はこの村でも、何年かに一度

いるもんなんだよ

人間が100人集まれば、何人かは違うもんだよ

あの町の駅に近い裏通りにあるって

聞いたことがあるよ」

 

「俺も知ってる

でも、結婚したらそんなとこ行っちゃダメだろ?

俺、あいつのこと真剣に愛してたから」

 

「って、母ちゃんに言われたんだろう?

あの人は賢いいい人だけど

人目を気にしすぎるからね~

村の婆さんたちはみんなわかっているんだよ」

 

人のうわさ話をしてはいけない

悪口を言う人間とは深い付き合いはしない

えらいことだよ!

でも、そんな薄っぺらな人づきあいじゃ

何にもわかんないし、今回みたいなことにんるんだ

 

「シカオ!もう、あきらめな!

あんたが嫁さんを真剣に愛していたんなら

連れ帰ったって、苦しめるだけだろう?

あんたが嫁に変なプレイをしなくても

町に遊びに行けば傷つくし

行かなければ、あんたがストレスで我慢できなくなる

本当に好きで嫁のことを思っているのならば

別れるしかないんだよ」