発達障害の母
このボロアパートの中は
本当にニューヨークか
イギリスのベーカー街にある
古いアパートだ
置いてある家具がまた、
古いマホガニーの
私はネットでしか見たことのない
イギリス様式のものだ
でも、それは高校時代のなっちゃんが
この年齢になったら、使っていそうな家具だった
「コーヒー飲む?
水出しのがあるんだけど」
私は喜んで頷きながら
壁際の本棚に目を通す
そこにある翻訳物はひとつもない
そして、バーナード.ショー
オー.ヘンリー
「相変わらずだね〜
結婚はしなかったの?」
あの頃のなっちゃんのイメージは
医者になっているか国際弁護士か
世界を飛び回る女性投資家
そんな大人になっていそうな女の子だった
男子に絶大な人気はあったけれど
高校生の男子なんか興味もないって感じだった