その先

嫁の由美は孝之に直接、

不満を爆発させなかったようだ

何度か実家にも帰って話したようだが

トミーが言ったように

夫の浮気ぐらいで!と諭されたのだろう

もう、私にも何も言わなくなった


しばらくすると

トミーがやってきた


「おばあちゃん、ママ、浮気してるみたい」


「また、浮気騒ぎかい?

あんたが嫌じゃないんなら

好きにさせときな」


トミーは悩ましい口ぶりで


「パパは違っていたでしょう

でも、もしパパが不倫しても

ショックじゃないよ

でも、ママはやっぱり嫌かな」


その気持ちはわかる


「リアルに子供でもできたら

目に見えるからね」


私の容赦ない言い方に


「おばあちゃん!言い方!

でも、そういうことなのかな?

なんか嫌なんだよね

それも、僕の塾の講師だと思うんだ」


 その先

私は嫁の両親にはほとんど会っていない

トミーがいうのならばそうなんだろう


「ママってお嬢様だし

おじいちゃんの言うことを絶対に聞くよ

おじいちゃんはなんでも、外に女が

たくさんいて

今でもそうらしいから

ママがパパの浮気で家に帰ったら

めちゃくちゃ怒るだろうし

ママって自分で考えて行動しないから

いつだって何処かから聞いた話で

自分がすることを決めて

僕たちを振り回すんだ」


トミーは孝之に似て頭がいい

私は少し落胆したように


「2人であのマンションをのっとる話は

無くなったね」


そう言うとトミーも悲しそうだった

 その先

孝之の言葉はすぐに信じた

だいたい、仕事がらみじゃなきゃ

女と付き合うなんか、考えられない

孝之はそう言う子だ

何か、仕事上の理由があるんだろう

由美が調べさせた興信所は

二流だったに違いない

と言うか、孝之の会社は一流企業だ

何か仕事上のことで

孝之の浮気を装ったのなら

そんなちゃちな興信所に

わかるわけがない


次の日、トミーにそう話すと


「やっぱりね

パパって仕事できるから

色々すごいことやらされているんだよ

ママにはわからないからね」


トミーお母親のことは

よくわかってる


「それに、騒ぐだけ騒いで

多分、離婚はしないよ

ママのところのおじいちゃんや

おばあちゃんは古風な人たちだから

夫の女あそびで離婚するなんて

許すはずないからね」

その先

孝之は笑いながら


「由美らしいな!

どうせ興信所かなんかに

調べさせたんだろう

まぁ、あれは詳しくは社外秘だから

話せないけれど

こういうことになってもいいと

覚悟してやっていたことだから

由美が出ていくのならば

僕もいるから3人で暮らそうよ

ああいうタイプの人間って

自分の頭がどの程度かわかっていないのに

なんでも、やりたいようにしたがるんだ

それに、リーダーシップを取ることで

自分はしっかりものだと勘違いしてるしね

ちょっと、うんざりしてるんだ

まぁ、残念なことに

好きな女はいないから、やはり3人だよ」


 その先

孝之は私と2人で食事するのは

久しぶりだ


「母さん、ここでよかった?

家に遊びに来てくれたらよかったのに」


私は落ち着いた孝之の態度に

何だか、嫁の由美さんが言ったことは

本当かしら?

でも、興信所で調べたって言ってたし


「由美さんが離婚がどうのって話にきてさ

そしたら、次の日、トミーがやってきて

トミーと私の希望を

聞いといてもらおうと思ってさ」


孝之は、ああそういうことかというように


「希望?」


「ああ、由美さんが実家に帰って

あんたが好きな人のところで暮らすならば

あのマンションが空くだろう

それで、私とトミーがもらって

住みたいんだけど」

 その先

ブリトーってやつは、なかなか美味しかった

食べ終わると


「ママ、昨日の夜、ここに来たんでしょう

おばあちゃんは呑気に

高級料亭なんか行って!ってぶち切れてたよ

だから、朝はこういうのの方が

いいかなって思ってさ」


「トミーはどうしてここに来たんだい?

まさか、親の離婚問題で

悩んでいる

なんていうことじゃないだろうね」


「まさか!僕は大学卒業するまで

どっちかが面倒見てくれれば

どうでもいいんだけど

そうなった時に、ここに住んじゃダメかな?

それを相談しに来たんだ」

 その先

「パパが浮気してるんだって!」


そう言う話を聞いているのならば

私はトミーに


「ああ、そう言ってたよ

それで、別れるの?って聞いたら

トミーがいるからって言うから

トミーは大丈夫!

大人だからって答えておいた

ここでいいのならば、うちに来ればいいし

孝之が女と暮らすようで、

ママが実家に帰るのならば

ここは引き払って、

今のマンションに2人で住もう」


そう話すと、トミーは嬉しそうに


「それいい!」


そう、笑っている


「その前に、真実を調べましょう

由美さんの言うことは

興信所で調べたことらしいけど

孝之の話も聞いてみないとね

それから、マンションを私たちに

明け渡すように話しましょう!」