誘惑の花

スピカが学校に行っている間

あの、アパートを訪ねてみた

まさか、りさ子はいないだろうが、念のため

ドアを叩いてみる

出てきたのは太って眼鏡をかけている、大男だった

もう、きっと、引っ越しているだろう、そう思ってドアを叩いたのだが

その顔はスピカが最初に京子のところに来た時と

あまりに似ていたから

あ、これが父親だとすぐに思った

やはり凶暴な男なんだろうか?

りさ子とはどうなったのだろうか?

あの時、りさ子は知り合いの女の子にお金を払って

この男と寝てもらう

そうすれば、離婚なんかすぐにできる

そんなことを言っていた

本当にそんなことをしたのだろうか?

京子の頭の中にはそんなことがよぎっていたのだが

ふと、その男の手に握られた本に目が行った

 

「何か用ですか?」

 

その言葉つきは穏やかなものだった

そして、その男は京子の身なりやしぐさから

どうやら、訪問販売ではないらしい

そして、何やら思いついたように

 

「もしかして、りさ子の田舎のお母さんですか?」

 

やはり、この男がスピカの父親だろう