誘惑の花
家の中ではいつだって、スピカと京子のふたりだ
京子は生まれてから3年、父からも母からもまともに
愛されることもなく、最後は母に捨てられる
この子にできるだけのことをしたい
それが、俊哉とは人生を共にしなかったが
万が一共にしていたら、スピカのような子供を
授かっていたかもしれない
そう思って、お受験の勉強もできるだけ楽しく
二人で何度もやる
何度もやるのは京子から言い出すのではなく
虹の絵を書いて、上から間違わずに色を塗るとか
お話を聞いて、犬さんが何匹出てきたとか
その数の丸を書く
そんなことが面白くてたまらないようで
何回もやりたがったのだ
折り紙で作る虫や動物も大好きで
気がつけば、座って折っている
だから、このお稽古に通っている間
スピカはいつも一番だった
「いつもよくできて、スピカちゃんすごいですね」
良く、一緒に待っている医者の奥さんや
お金持ちそうなおばあさんに感心されるやら
嫉妬されるやらだ
「いつも、おばあさまといらっしゃっているけれど
ご両親はお二人ともドクターとかなんですか?」