誘惑の花

スピカは大人は京子以外は油断ならない

心の奥底に、そんな気持ちがあるのはよくわかった

京子のところに来た時

京子が髪の毛を梳いてあげようと、

ふっと、頭に手をやったことがある

すると、首をすくめ手で自分の頭を覆った

やはり、父親だけでなく、りさ子にも手をあげられていたのだろう

ここにきて、京子は絶対にそんなことはしない

そう理解するまで、かなりかかった

だから、お受験用の教室でやっていけるのだろうか?

と心配していたが、京子がいつも、その教室の外に座っていることで

安心しておけいこができるようだ

外に座っている母親、祖母はは京子だけでなかったので

この年頃は、まだまだ、一人で何かをするのは不安なのだし

大人の言うことを聞かずに好きに動き回ったりすることも

当たり前のことらしい

京子は自分の子供たちの時にはそんなこと考えたこともなかったくらい

自然でのびのびして、それでいて大人を信じて

言うことを聞けば、自分にとっていいことがあると理解していた

しかし、スピカの場合は大人を信用していないから

教室の中で好き放題動くこともないし

絶対に言うことを聞かなければ、何か暴力を受けるのではないか

そう言う意味で、優等生だった

 

一緒にお稽古が終わるのを待っている母親や祖母に

 

「スピカちゃんは凄いわね~

何でもよくできるし、おとなしくてうらやましいわ」

 

京子はその言葉にイエイエと言いながら

スピカの今までの可哀そうな生い立ちに心を痛めた