誘惑の花

自分のほうをじろじろ見ている京子に気が付くと

にらみつけるように、通り抜けようとした

京子は慌てて

 

「あ、田舎の、…村の人間なの

お母さんに元気かどうか見るよう

頼まれて、来たんだけど・・」

 

田舎の村の名前は、絶対だった

そこの出身なんか、こっちではだれも知らない

りさ子は京子を見直した

 

「え?お母さんが?」

 

しばらく考えていたが

 

「同じ田舎の人だとは思うけど

お母さんに頼まれたって言うのは嘘!

あの人はそう言う人じゃない」

 

確かにそうだろう

 

「あ、まあ、私はお父さんの知り合いでね

この夏、田舎に帰ってお父さんのお墓参りをさせてもらったの

その時に、お母さんとも挨拶したから」

 

「ふ~ん」

 

なんだかそれ以上話が進まない

ベビーカーに乗っている小さな女の子が

なんだかぐずり始めた

見れば、2歳くらい

もう、何でも食べそうだ

すぐむこうにファミレスが見えていた

 

「もう、夕ご飯の時間ね

これから、帰ってご飯の支度?」

 

かおりは首を振りながら

 

「今日は旦那が帰って来ないから

二人で適当に済ます」

 

彼女が持っている買い物袋のビニールからは

カップヌードルが透けて見えた