誘惑の花
俊哉が悪いやつなのは、あの少ない時間では
全くわからなかった
彼はずっと優しかったし、一緒にしゃべっている間
別に意地悪そうなことだとか、暴力的なことだとかは
全く話さなかった
でも、田舎の同級生たちから聞いた話は凄すぎて
強盗、強姦、そしてゆすり!何でもするような話だった
いつだって、逃げるのがうまい!
証拠を残さないようにする
そんな話ばかりだった
愛している、会いたい!それとは別に俊哉を警戒したほうが
いい相手だと思い始めてもいるのだ
このマンションがほとんど京子の物とわかったら
彼はいったいどうするだろう
コーヒーを淹れて、
「夕食は?食べたの?」
そう聞いてみる
俊哉はコーヒーに砂糖とミルクをたくさん入れて飲みながら
「仕事終わって、すぐにここに来たんだけど留守だったから
駅の近くの牛丼屋で飯食った」
「え?ずっと、待ってたの?」