誘惑の花

園田敏夫

何事もそつがなく、でも誠実で

一緒に働いていても、彼が自分に恋しているのはよくわかる

 

「京子!ちょうど、もらったチケットがあるから

コンサートに一緒に行かない?」

 

多分、京子の趣味を調べて、

必死にチケットを取ってくれただろうに

そんな風に声をかけてくれる

見え見えだけど、気分は悪くない

彼に対して恋心は持っていないが

一緒にいて楽しい相手だ

 

その夜も食事をし京子の部屋の下まで送ってくれた

そろそろ部屋に誘ってもいいかなと思っているが

敏夫のほうが、そんなことは全く考えていない

と言うように、さっさと帰ってしまうので

苦笑しながら見送る

 

「じゃ、京子!また、明日な!」

 

そんな風に爽やかな後ろ姿も悪くない

でも、ものすごくやせ我慢している空気も

まるわかりなんだけど・・・