誘惑の花

それでも、美奈子にわかるようには追いかけられなかった

それが最後のプライドで

京子が俊哉に狂っていることは

一緒に働いている店長にも佐由美にもわからなかった

 

俊哉は美奈子の元に戻り

京子は立ち上がれないほど、俊哉を想った

それでも、何とか普通の生活を送り

自分の人生の何とつまらないことかを憂い

毎日を過ごしていると

たぶん、女はそう言う時が一番きれいなのかもしれない

恋愛に悩み、いつも、緊張感と悲壮感にあふれ

本人は気が付かずとも、回りは綺麗になったともてはやした

 

「京子さん、うちの彼の友達がここにコーヒーを飲みに来て

京子さんに一目ぼれしたって話してましたよ

付き合ってる人とかいないんですよね

結構いいやつなんですけど、ダメですか?」

 

京子はダメに決まっている

今、横にいてほしいのは俊哉以外考えられない

それでも、声をかけられることも

実際に付き合ってほしいと言われることも

今まででは考えられないほど増えてきた

人生にはモテ期なるものがあるらしいが

どうやら、今がその時かもしれない