逃亡

シズカは

 

「はぁ?」

 

意味が解らないように旦那を見た

 

「結婚って?巴、あんた!

この爺さんと駆け落ちしたんじゃないのかい!

だいたい、離婚は?何時したんだい?」

 

巴さんはうんざりしたように

 

「駆け落ちなんかしてないわ!

多分、シカオさんのお母さんが騒いだんでしょう?

かずさんが村の知り合いに、シカオさんやお義母さんの

様子を聞いてもらっていたの

シカオさんが村を出るとき

私が置いて来た離婚届に判を押して

ここに送ってくれたのよ」

 

「そんで、結婚って何よ?」

 

「コンビニで働いているうちに、いい人が出来たって事さ

良かったな~」

 

旦那が答えると

 

「どんな人なんだい?

変な人じゃないだろうね~、仕事は?」

 

巴さんはあまり話したく無さそうだった

シズカのような母親ならば無理はない

 

「ねえ、シズカさん

もう、家に帰りましょう

あなた、お金も自由に使えるし

これから好きに生きられるじゃない」

 

「は?私は母親よ!結婚するならするで

相手のところに挨拶に行かなきゃ

それより、その、旦那になる人が

私に挨拶に来なきゃダメでしょう!」

 

私は連れてきたことを悔いた

ショウの言うとおりだった

 

「でも、ほら、かずさんやあんたが

会ってみてどうだったんだい?

よさそうな人?」

 

「本当に優しい人

彼もバツイチだから、あまり派手なことは考えないで

一緒に住んでみて、落ち着いたら

籍を入れるぐらいのことがいいわよ

シズさんも、もう、連絡がつくんだから

ちょっと、様子を見たら?」

 

かずさんのおっとりとした口調は

シズカの何かに触れたらしい

 

「まぁ、そう言うんならそれがいいのかもね

村で出戻りって言うの恥ずかしいし

今度はちゃんと我慢するんだよ」

 

そんなことを言った

シズカはシカオが変な性癖だったことなんか

それも命の危険がある性癖だったことが

全くわかっていなかった