逃亡

「新田のおばさん

叔父さんには本当にお世話になって

ごめんなさい

とても助かりました」

 

私は首を振った

巴さんこそ、大変だったね

小夜さんはシカオのことしか頭になかったからね~

巴さんの苦労は知っていても

小夜さんの性格が、あれなもんで

村の者は誰も口に出せなかった

大変だったね~」

 

「でも、叔父さんが連れだしてくれて

それからは、とても楽しかったです」

 

「何が楽しいじゃ!私らは面子丸つぶれ

小夜さんが死んでくれたからいいようなものの

本当に困った子じゃよ

でも、安心しな、さっき結婚がどうのとか

おかしなことを言っとったけれど

今はお母ちゃんの天下

帰ってきたら、楽だよ~

巴はガソリンスタンドが募集しとったから

あそこで働けばいいしな」

 

すると、夫が静かに説明し始めた

 

「シカオ君は普通の子作りじゃ満足できない男でな

夜な夜な、巴さんをひどくたたいたり、首を絞めたり

ロープで縛ったりしてたんじゃ

巴さんの様子や、シカオが若い男たちに話すのを聞いて

村の男たちはだいたい、わかってはいたけれど

何もできなかった

あの日は巴さんが裏山の神社のところで

首をくくろうとしていたところに出会って

私が誰にもわからないように、ここに連れてきたんだ

私が帰って、小夜さんやシカオのことを話すと

誰もが不幸になるから、私も帰らないことにしたんだ