逃亡
その濃い化粧の顔は東京に出て来てからは
まったく身に覚えがないし
田舎の村でもこんな人はいなかったと思う
ただ、私は今の生活が少し窮屈にはなっていた
ここは高級マンションで、揃えられた家具も
どれも、お金のかかった素敵なものだが
どうも趣味が違う
前のアパートの家具を修理して、どこか
安いアパートに引っ越したいと思っていた
チェリーのこともシェリーのことも
美佐子さんがいれば大丈夫だ
「そんな変な女に狙われる覚えはないんだけどね~
私だけどっかに引っ越すよ
今、家具を預けている倉庫のお金もバカにならないし」
幸喜は寂しそうに
「ばあちゃん、若いころ、やばいことしてたんじゃないの?
それを思い出して、ちゃんとどうにかしないと
きりないじゃん!」
「幸喜は自分のことをしっかりしな!
子供もできたんだし、チェリーはもう、あんたに惚れちゃいないよ
もう一度、惚れさせるぐらいがんばんないと!」
幸喜はぺしゃんこになって泣きそうに笑った
「わかってるよ!
通帳、美佐子さんに預かってもらうわ」
私はすぐに、そこからは1時間以上ある神奈川のほうに
引っ越した