逃亡

美佐子は挨拶をすますと

 

「お母様の部屋はこちらです

すみません、お母様は家具にはとてもうるさいと

お聞きしたんですけど

とりあえず、ベッドだけしか入れられなくて」

 

昨日連絡して、ベッドまで用意してくれたのならば

本当に有能な女だ

 

「ああ、気にしなくていいよ

ありがとう

後、五日もすれば赤ん坊がくるんだけど

そのベッドだけはちゃんとしたものを用意してくれれば

あとはどうでもいいよ」

 

こんなことがあっても美佐子は

ここを出ていく気はなさそうだ

チェリーは仕方ないにしても

あの、拓を見たら卒倒するんじゃなかろうか

しかし、今時の人だ

動画なりなんなりを見て心の準備はしているだろう